ここでは、上顎のインプラント治療に絞ってお話します。

患者さんの中には、初診後すぐ、手術が出来ると思われている方がいます。

しかし、診療案内の治療の流れでいうとSTEP3の再評価検査後に手術を行います。つまり、むし歯があったり、歯周病があったりする場合、まずその治療が先となります。これは、手術時やその直後のインプラントへの細菌感染を防ぎ、インプラントを長持ちさせるために必要不可欠なことです。

患者さんは、インプラントを用いて、取り外ししないブリッジでの治療を希望されました。

そこで、まず、治療の目標(ゴール)を設定するために咬合器上で診断用ワックスアップを行いました。これは、模型上で歯科用のワックスを使って歯を並べるものです。

下記の写真は、そのワックスを石膏におきかえたものです。

診断用ワックスアップ

これをもとに、診断用ステントを作成し、お口に入れて、口元の様子を患者さんに見て頂き、見た目(審美性)のチェックをします。その後、インプラントを埋入する部位の骨の状態を調べます。

診断用ステント 診断用ステント

この診断用ステントを装着した上でCTを撮影し、そのデータをシンプラントやネモという専用のソフトに取り込むことで、パソコン画面上でインプラント手術をシュミレーションできます。

神経や上顎洞などを避けているか、インプラントを埋入するのに必要な骨の高さや幅は十分か。

足りない場合、骨をどの程度作らなければならないか。骨質はどうかなど、術前に知ることで患者さんに対する説明や手術の準備を十分に行うことが出来ます。

その上で、麻酔や鎮静の方法などを考慮することも出来ます。

安全第一ですので、すべてのケースで必ずこの術前の手術シュミレーションを行っています。

以下、今回のケースの画像の1部を紹介します。

手術シュミレーション

 

この7歯欠損に対しては、インプラントは4本で治療を行うこととしましたが、骨の幅が足りないところが多く術前シュミレーションなしの手術では、患者さんに与える身体的・時間的侵襲が多大になるケースでした。

シュミレーションのおかげで、患者さんの希望でもあった「骨造成術など腫れや痛みの出やすい術式は避けたい」

はある程度、希望に添えたと思います。

具体的には、骨が比較的にあり補綴的にもよい部分を探し、その部位と埋入角度を診断用ステント上に落とし込み手術時の参考としました。この手術用ステントは、院長山口 將日がアナログで作りました。しかし、2022年5月現在では、ネモでプランニングすることで、プランニングと同じようにインプラントを埋入できる手術用のガイドを院内の3Dプリンターで作成できるようになっており、より精度の高い手術用のガイドが作れるようになっています。

インプラントが骨と結合後、仮歯を装着

インプラントが骨と結合後、仮歯を装着しました。

その後、上顎前歯部の歯肉退縮を避けるために口蓋の結合組織を移植しました。

その後、治癒期間を数カ月おき、最終的なブリッジを装着しました。現在まで定期検診を欠かさず行っています。

結果として、何のトラブルもなく推移しています。